第4回|「成長過程をやり直す」——寝返り・ハイハイ・立ち上がりが生理歩行の土台になる理由

私たちは赤ちゃんの頃、誰に教わることなく「寝返り→ハイハイ→つかまり立ち→歩行」という順番を通って成長します。この流れには意味があり、身体の構造と神経の発達にとって最も効率のよい順序として設計されています。

しかし、大人になるにつれ習慣や姿勢の癖、運動不足、長時間のデスクワークなどで、この成長過程で身につけた“本来の動作”から大きく外れてしまいます。その結果、生理歩行が崩れ、肩こり・腰痛・自律神経の乱れといった不調として現れるのです。

成長過程の動作は「歩行のための準備運動」だった

寝返りは体幹の連動、ハイハイは四肢の協調、立ち上がりは重心のコントロール。つまり、成長過程で習得する動作は、生理歩行を完成させるための準備であり、歩行そのものの“設計図”です。

これらが十分に発達していない、もしくは大人の生活習慣で崩れてしまうと、歩行のどこかで無理が生じ、痛みや不調が起きやすくなります。
こもれび治療院が「成長過程の動作の再獲得」を強調する理由はここにあります。

寝返りがつくる「体幹のねじれ」と歩行の関係

寝返りは、骨盤と肩が互い違いに動く“ねじれ”の動作です。歩行の際、骨盤と肩が反対方向に動くのはこの動作が基礎になっています。

寝返りが苦手な人ほど、歩くときに上半身が固まり、手足だけで歩こうとしがちです。この状態では地面反力を利用できず、歩けば歩くほど疲れる歩行になります。

寝返りの再学習は、生理歩行のスムーズさを取り戻すうえで大きな意味を持ちます。

ハイハイは「四肢の協調性」=歩行のリズムそのもの

ハイハイは、腕・脚・体幹を同時にコントロールする、最も効率的な全身運動です。
この動作では、右手と左脚、左手と右脚という対角線の動きが自然に連動します。

この協調性が弱いと、生理歩行に必要な“クロスの動き”が失われ、左右どちらかに重心が偏った歩き方や、足が前に出にくい歩行につながります。

こもれび治療院の施術でも、特に歩行が乱れている方には「四つ這い運動」「ハイハイ様の動作」をセルフケアとして提案しています。これは歩行の基礎を取り戻すためのリセット作業です。

立ち上がりは「重力との付き合い方」を学ぶ動作

赤ちゃんが立ち上がる時、膝を内側に入れたり、反り腰になったりせず、自然に重心を前に乗せて立ち上がります。力みがなく、重力を味方にする立ち上がりです。

しかし大人の立ち上がりは、膝を痛めたり、腰を反らせて無理に立ち上がったりと、非常に効率の悪いものになりがちです。この状態では歩行にも負担がかかり、生理歩行を妨げる要因になります。

正しい立ち上がりの再獲得は、歩行における重心のコントロールを取り戻す近道です。

成長過程をやり直すことで「生理歩行への道筋」が生まれる

寝返り・ハイハイ・立ち上がり。これらは単なる赤ちゃんの動作ではなく、生理歩行をつくるためのピースです。
大人でも、これらのピースを取り戻すことで、歩行の質は大きく改善します。

次のような変化が見られる方が多くいます。

  • 歩きやすくなり、疲れにくくなる
  • 肩や骨盤が自然に連動する
  • 膝や股関節の痛みが軽減する
  • 腰痛が出にくくなる
  • 自律神経が整い、睡眠の質が向上する

この変化は、「身体が正しい動作を思い出した」証拠です。
構造医学・神経整体の観点では、成長過程の動きが神経の可塑性を高め、身体の連動性を回復させることも説明されています。

次回はいよいよ最終回。「生理歩行を習慣化する方法」へ

インソールで軸を作り、靴で土台を整え、成長過程の動作で歩行の準備を整える。
次のステップは、“これを日常生活の中で続けること”です。

第5回では、生理歩行を自然に続けるための習慣づくりや、身体が勝手に回復する生活のコツをお伝えします。通院に頼りすぎず、自分で体を整えられる未来を目指しましょう。

こもれび治療院